Abstract |
「Summary」精神科看護において, 看護師はそれぞれの特有の距離をもって患者とコミュニケーションを図っている. 今回, 看護師それぞれがもつコミュニケーションスキルが患者との距離に関係しているのではないかと考え, 精神科看護師のコミュニケーションスキルと患者との距離の関係性について研究を行った. A精神科病院に勤務する管理職を除く看護師・准看護師165名を対象とし, 無記名自記式による質問紙への回答と提出を求めた. 質問紙は, 巻き込まれすぎたかかわりの状態 (over-involvement) を測る尺度として看護師版対患者Over-involvement尺度, 患者との距離をおきすぎる状態 (under-involvement) を測る尺度として看護師版対患者Under-involvement尺度, コミュニケーションスキルを測る尺度としてENDCOREsをそれぞれ用いた. それらに加え, 対象者属性として「性別」「年齢」「精神科勤務年数」「現在勤務している病棟の形態」の質問項目を加えた. 165名に配布し, 136名 (回答率82.4%) からの回答を得た. そのうち無効回答を除いた127名 (有効回答率93.3%) を対象とし, SPSSを用いた検定を行った. それぞれの尺度について, 下位尺度も含めて各尺度得点間について, スピアマンの順位相関分析を行った. また, 対象者属性の項目のうち2群に分かれるものについては, 各尺度の得点に差が見られるのかMann-WhitneyのU検定を行った. 3群以上に分かれるものについては, クラスカル=ウォリス検定を行った. 結果として, コミュニケーション能力, 特に自分の考えや気持ちをうまく表現する「表現力」が高いほうがより患者とより適切な距離を保つことができるといえる. また, 性差による男女の特色や経験年数などの要素によっても, コミュニケーションスキルや患者との巻き込まれに違いが出ることがわかった. 看護師各々が自身のコミュニケーションスキルが患者との距離に影響を及ぼすことを理解し, その上で治療的なかかわりを行えるようにしていかなければならない. なお, 本論文について発表者らに開示すべき利益相反関係にある企業などはない. |