Abstract |
「Summary」 児童思春期精神科には, 自閉スペクトラム障害(以下, ASD)と診断され不登校の児が多く入院している. 先行研究では, ASDと不登校の児は社会性・コミュニケーション能力の乏しさという点が類似していると述べられており, 感情の表出が乏しいことが多い. 今回, ASDを背景にもつ不登校児と10〜15分の遊びを行うことにより感情語の表出が増え, そして表出する内容が変化し, さまざまな葛藤に関する感情語の表出へつながるかを明らかにした. 分析方法は, 看護記録より感情語をキーワードとし抽出し, 質的に分析した. 倫理的配慮として, A氏および家族に対して, 研究内容・結果の公表などについて説明し, 対象者の意思で研究参加の諾否が決定され, 承諾が得られた. また, 本研究は, 東京都立小児総合医療センター倫理委員会の承認を得た(承認番号:2020b-48). なお, 本論文について発表者らに開示すべき倫理相反関係にある企業などはない. 第1期は, 遊び中は無表情が多く, 快・不快を示す感情語が数回みられた. 徐々に病棟適応が進み, 促しや選択肢を与えることで「楽しさ」や「さびしさ」の表出がみられた. 第2期には, 自分がうまく話せないことへの苛立ちや意見を話すことに対しての「恥ずかしさ」, 人の目が気になることの表出があった. 感情語の表出回数は, 第1期は1日の最大回数が2〜3個であり, 第2期は1日の最大回数が7〜8個であり, 平均値は両期間ともに2.9個であった. 長期の不登校から, 家族以外の人とコミュニケーションをとることに対して緊張や不安が強いと考えられた. 遊びを行うことで緊張感を軽減でき, 良好な信頼関係が構築された. また, 遊びの介入を続けることで安心感を得られ抱いていた葛藤や不安が軽減したと考える. 加えて, 毎日看護師と遊ぶという構造自体がA氏の存在を認めてかかわるメッセージとなり自己肯定感の上昇につながり, 徐々に対人関係における自信がつき, 感情語の表出が増えたのだと考える. 本研究で, 不登校のASDの児への遊びのかかわりを行うことで, 感情語の表出が増加するという示唆を得た. しかし, ASDの特性は1人1人違うことや本研究では事例が1件であることから, 今後も研究を重ねていく必要があると考えられる. |