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アブストラクト

Title 膝関節屈曲制限の見方と運動療法〜変形性膝関節症を中心に〜
Subtitle 特別寄稿
Authors 赤羽根良和2)
Authors (kana)
Organization 2)さとう整形外科
Journal 理学療法京都
Volume
Number 49
Page 2-7
Year/Month 2020 /
Article 報告
Publisher 京都府理学療法士会
Abstract 「要旨」変形性膝関節症や外傷後に多くみられる膝屈曲制限因子を解剖・機能解剖学から病態を捉え解説した. 正常膝の膝蓋骨は膝屈曲時に固有の回旋運動を伴いながら遠位方向へ滑動し, 膝蓋骨と膝蓋腱の長径比は膝伸展位から深屈曲位まで終始約1 : 1である. この膝蓋骨の遠位滑動には, 広筋群を中心とした大腿四頭筋の伸張性・滑走性とともに, 膝蓋上嚢の滑動機構や前大腿脂肪体の柔軟性が維持されていることが条件となる. これらのうち, 一つでも欠如した場合は膝屈曲制限を生じる可能性がある. そのため, 理学所見では膝蓋骨と膝蓋腱の長径比や膝蓋骨の遠位滑動を評価することが重要であり, 膝屈曲制限を認める膝関節では組織や組織の病態に応じた非生理的な運動が生じることに留意し, 運動療法ではこれらに対する機能回復が求められる. 膝蓋下脂肪体(Infrapatella Fat Pad:以下, IFP略す)が位置する区画内は膝屈曲により動態変化するため, IFPは常に機能的変形を余儀なくされている. 一方, IFPが柔軟性を失い機能的変形ができなくなると, IFPは膝屈曲時に周囲からの圧迫負荷を受け, 疼痛や膝屈曲制限が生じる因子となる. 理学所見ではIFP周辺組織やIFP自身の柔軟性や滑走性を評価することが重要であり, 運動療法によりIFPが区画内の動態変化に対応できるだけの機能回復が求められる. 膝深屈曲すると大腿骨顆部によるロールバック機構により, 内側顆部ではlift offし, 外側顆部では後方亜脱臼する. 一方, ロールバック機構の破綻は, 関節内圧を高め, 膝窩部痛が生じるきっかけとなる. 理学所見ではロールバックの再現と疼痛の軽減程度を評価することが重要であり, これらに関連性を認める場合は, 運動療法により生理的な関節内運動を誘導し, 後方に集中する圧刺激を分散化する機能回復が求められる. 理学療法士は解剖・機能解剖学の知識と組織を確実に触診する技術を身につけることで, 適切な評価と的確な運動療法が実現できると信じている.
Practice 医療技術
Keywords 膝屈曲制限, 評価, 運動療法
  • 全文ダウンロード: 従量制、基本料金制の方共に770円(税込) です。

参考文献

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  • 3) 千田益生:運動療法. 関節外科 29(9):45-51, 2010.
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  • 6) 林典雄:運動療法のための運動器超音波機能解剖. 文光堂, 2015.
  • 7) 伊達伸也・他:膝蓋骨の骨内圧に関する実験的研究. 整形外科と災害外科 33:1186-1189, 1985.
  • 8) Pinskeroval V, et al:The knee in full flexion an anatomical study. J bone joint surg 91-B:830-834, 2009.
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  • 10) 中川滋・他:オープンMRIを用いた膝関節の運動解析. 関節外科 27(9);1177-1186, 2008.