Abstract |
「要旨」【背景】肩甲骨烏口突起骨折は稀な骨折であり, 臨床現場で遭遇する頻度は少ない. 烏口突起は関節窩, 烏口鎖骨靱帯, 鎖骨遠位部, 肩鎖関節, 肩峰とともにリング状の複合体(以下, SSSC)を形成している. 烏口突起骨折を含むSSSC 2か所以上の破綻は手術適応とされることが多いが, 明確な基準はない. 【目的】SSSC 2か所以上の破綻を伴う烏口突起骨折に対する術後成績を明らかにすること. 【研究デザイン】ケースシリーズ. 【設定】第3次医療機関1施設での後ろ向き研究. 【対象】2018年1月以降にSSSC 2か所以上の破綻を伴う烏口突起骨折に対して手術を行った7例7肩(男性5例, 女性2例)を対象とした. 平均年齢は51(15〜79)歳, 平均観察期間は30.4(6〜52)か月であった. 【要因】烏口突起骨折に対してcannulated cancellous screwを用いて固定した. また, 可能な限り合併損傷に対する内固定も行った. 術翌日より合併損傷の内容に応じて可動域訓練を許可した. 【主要アウトカム】受傷機転, 骨折型, 手術までの待機日数, 周術期合併症, 偽関節の有無, SSSC合併損傷の内訳, 臨床評価は可動域, 米国肩肘学会肩機能評価スコア(以下, ASESscore)を検討した. 【結果】受傷機転は交通事故5例, 転倒転落が2例で高エネルギー外傷が5例含まれていた. 骨折型は7例すべて小川分類type 1であった. 手術までの平均待機日数は11(7〜16)日だった. 周術期合併症や偽関節を認めなかった. SSSC損傷の内訳は, 肩鎖関節脱臼3例, 鎖骨遠位端骨折1例, 肩峰骨折3例だった. 平均肩挙上可動域は152.8(90〜180)°で, ASES scoreは平均76.6(25〜100)点だった. 60点未満の症例は2例みられ, いずれも高エネルギー外傷による多発外傷例だった. 【結論】SSSC 2か所以上の破綻を伴った肩甲骨烏口突起骨折に対する骨接合術の成績は, 重症多発外傷例などの一部で成績不良であり, 早期の手術やリハビリテーションの介入を検討する必要がある. |