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アブストラクト

Title 中国広東省広州市における日本人流行性感冒 (インフルエンザ) 症例の回顧的分析
Subtitle 原著
Authors 孫力1,2, 張小峰1,2, 聶飈1,2, 楊偉峰1,2, 高振威1,2, 荒井富美子1,2, 角居典枝1,2, 屈江波1,2, 荒井萌芝1,2
Authors (kana)
Organization 1広州市東西方医療門診部, 2広州市櫻華医療門診部
Journal 日本渡航医学会誌
Volume 15
Number 1
Page 1-7
Year/Month 2021 /
Article 原著
Publisher 日本渡航医学会
Abstract 要旨:流行性感冒(influenza, IL. 以下インフルエンザと記載)は, インフルエンザウイルスが原因で起こる急性呼吸器感染症であり, 全世界及び中国においても重点モニタリング予防対象とされる感染症である. 今回われわれは, 中国広東省広州市の2015〜2017年における日本人インフルエンザ症例について, その流行の特徴と臨床症状を整理し, 加えて中国南方地区のインフルエンザ流行の特徴に着目し, 比較研究を通して当該地域の日本人に対するインフルエンザの予防と治療の対策を考察する. 2015年1月〜2017年12月の期間, イーストウェスト・櫻華メディカルセンター(広東省広州市)に来院したインフルエンザ様疾患(influenzalike illness, ILI. 以下ILIと記載)の日本人患者より採取した鼻腔または咽頭拭い液, 1171検体に対して行ったインフルエンザ迅速診断検査の結果, 及びILI症状について分析. 広東省広州市における日本人のインフルエンザは日本国内の流行とは異なり, 年間を通じて発生し, 年2回の流行のピークがあり, 冬季から春季と夏季あるいは冬季から春季と秋季に渡ることが分かった. 患者数は2015年6月, 2016年3月, 及び2017年7月に集中. 2015年1月〜2017年12月におけるインフルエンザウイルスの平均陽性率は39.88%, その中でA型インフルエンザが70.24%, B型は29.76%であった. 2015〜2017年のインフルエンザ陽性率には大きな差異が見られず(P>0.05), 優勢となるウイルスにも大きな変化は見られていない. またILI検体数とインフルエンザ迅速診断検査陽性数の間には, 正の相関関係が存在する(R=0.948, P<0.01). 同期間, 当院におけるインフルエンザの症例は主に男性で, 年齢別では41〜65歳(35.97%)に多く見られたが, 異なる年齢層でもウイルスの型に差異は見られず, A型インフルエンザウイルスが主であった. 高熱の者(体温≧38.5℃)のインフルエンザ陽性率は体温<38.5℃の者より明らかに高く(P<0.01), また, インフルエンザ陽性の患者の咳嗽, 頭痛, 咽頭痛の症状の発生率は, インフルエンザ陰性患者のそれより明らかに高かった(P<0.01). 下痢等その他の臨床症状は, 両者を比較して明らかな差異は見られなかった. 発熱の時間が異なるとインフルエンザの陽性検出率における差異は明らかで(P<0.05), そのうち発熱から2日のインフルエンザ陽性検出率が最も高いという結果を得た. 中国広東省広州市に居住する日本人のインフルエンザウイルス陽性症例数と中国南方地区の発症については, そのピーク時期が基本的に符合している. このことから, 広東省広州市における日本人のインフルエンザは現地における感染発症が主であり, 現地中国人の間での流行を反映しているものと推察される.
Practice 医学一般
Keywords インフルエンザ, 疫学, 中国広東省広州市, 日本人, 予防と治療
  • 全文ダウンロード: 従量制、基本料金制の方共に770円(税込) です。

参考文献

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