Abstract |
「サマリー」「予防投与のポイント」 : ・予防投与を行うにあたっては, 十分にリスク, ベネフィット, コストについて考慮すること ・予防投与が確立しているのは, 新生児眼炎, B群溶血性レンサ球菌, リウマチ熱の一次予防, 二次予防, 感染性心内膜炎の予防, 無脾症, ニューモシスティス肺炎, 慢性肉芽腫症における細菌感染症, アスペルギルス感染の予防などに限られている 「予防投与の原則」 : 周術期の予防投与, HIVや水痘などのウイルス感染症やインフルエンザ菌など細菌感染症などの曝露後予防についてはここでは言及しない 一般的に予防投与においては, 複数のリスクとベネフィット, そしてコストの問題が存在するため, 漫然と予防投与を行うことは推奨されない. 予防投与を行ううえで, 考慮するべき問題点としては, 以下のようなものがある ・予防するべき病原体の数 : 多いほど予防効果が弱くなり, 広域スペクトラムの抗菌薬が必要となる. そのため副作用が増え, 医療費も高額となる. そのため予防するべき病原体の数は絞るべきである ・病原体への曝露時間 : 曝露期間が長いほど, 効果は乏しくなる. 外因性の微生物に対する予防 (たとえば水痘やインフルエンザ菌曝露後の予防投与など) では予防効果は高くなるが, 内因性の微生物に対する予防投与 (膀胱尿管逆流現象) に対する腎盂腎炎発症予防のためのST合剤内服など) は効果が低くなる ・病原体の出所 : 外因性の微生物だと予防効果が高い ・予防する疾患の重症度 : 髄膜炎菌感染症や感染性心内膜炎などは予後不良の疾患であり, 予防効果があるならば予防を行うべきである. 一方で擦り傷程度での外傷であれば, 軽症であり, 予防投与は推奨されない ・標的臓器 : 血流が豊富で解剖学的にバリアがないような臓器では, 十分な抗菌薬の濃度が達成できるが, その逆の臓器では (中耳や人工物がある部位など) 十分な抗菌薬濃度が達成できないため, 予防効果は落ちる ・抗菌薬の特性 : 理想は投与回数が少なく, 安価で副作用が少なく, 狭域スペクトラムの抗菌薬である |